プロジェクトを通して感じていること

これまでの取り組み

空間のクオリティを求めて

今からおよそ10年前ー。
そこにいるだけで心地よいと思える空間をつくりたい、空間のクオリティを極めたいという思いは、素材や室内環境へのこだわりといった室内空間のクオリティの探求に留まらず、ランドスケープや街の景観との有機的なつながりへ目を向けさせ、そして、自然や環境、地域との関わり方にまで視野を広げていくきっかけとなりました。

それはまた、日々の業務の中で、「町家への取り組み」「環境への取り組み」「ランドスケープへの取り組み」「コミュニティへの取り組み」など、従来の建築設計事務所の枠組みを越えていく新しい試みをもたらしました。

さまざまな取り組みから10年経ち…

小河邸で感じた事 〜設計者の役割ということ

小河さんはとてもアクティブな方ですべてご自分でやってしまう超スーパーなお施主さんでした。
ログに使う丸太、丸太の加工、仮組、運搬職人さんの手配、コスト管理そして「プラン」もです。

設計は、このプランを法規上、施工上の課題をクリアーして、関係者の方に伝わる図面という共通言語を作成する事でした。

この建物は日本の現在の物流や生産からかけ離れたところで家が建てられるのか?という課題に正面から取り組まれています。 もちろん施主さんはそんな大それたことは考えず、ひたすらこうゆうものが作りたいという純粋な熱い想いだけだったとおもいますが…

 

私は建築生産のサイクルの一部で切り取られた役割をこなしていることを感じることになります。

小河さんの家づくりは「設計行為」は工期とお金を守るために「仕方がないねっ」と線引きをして、切り取られた役割をこなしている自分に気が付かしていただき、否応なしに一度再考を促すように感じられるきっかけになりました。

施主が総合プロデュースとディレクター、現場監督すべて行い、設計者は今の建設システムに乗っかるお手伝いをしただけです。

設計者の求められる「職能」が変化してきていると感じます。

施主の翻訳機能だったり、イメージの統合化だったり……..

iPhone が基盤を作ってアプリは自分仕様でカスタマイズ するように「建築」はその基盤づくりだと考えます。
目に見える部分のただただ視覚的刺激を作為として見せるものへ 行きがちな設計行為が施主と現場の双方向で自身の「作為」に溺れないように 自戒しながら真摯に取り組む責任重大な役割を担っていると改めて感じました。

→「セルフビルドで夢のログハウス 小河邸

 

2016年10月吉日
西建築設計事務所
代表取締役 西 久樹